ー Undercover ー

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「三木くんは、前の会社じゃ新人の教育係だったんだろ?」 「え? あっ、はい、そうです」 「じゃあ、人の扱いには慣れてるね。うちのスタッフは皆イイ人だから安心して。あ、でも女子には気をつけた方がいいよ。うちの会社の女子、見た目は乙女だけど肉食系多いのよ。三木くん超イケメンだから、あっという間に餌食になっちゃうよん」  控室で挨拶してからというもの、ずっと隣で喋っているこの軽薄そうな男は、奏真の直属の上司に当たる営業2課長の葛西だ。短い髪をツンツンに尖らせ、青白ストライプのフレームが特徴的な眼鏡でオシャレにキメ込んでいる所為か、スキンヘッドの田辺と同じ歳にはとても見えない。 「よぉっし着いたぁ。あ、三木くんのデスクはあそこねん。けどその前に、まずは仲間を紹介するよ」  営業2課と書かれたプレートが、高い天井からぶら下がっている。その下に並ぶデスクの列では、男女ほぼ同数の社員がゆったりと仕事をしていた。ガラスの窓を背にした一際大きいデスクが課長席らしい。その前に立った葛西課長の横に並ぶと、奏真は密かに深呼吸しながら、当分の間の同僚達を見やった。 「はいはい皆さ~ん、注目ぅ!」  クラブのDJみたいな葛西課長の掛け声で、散り散りになっていた2課のスタッフ25人が一斉に注目する。隣の1課にも中途採用者が入ったようで、同様に自己紹介が行われているところだった。 「そんじゃご紹介しますよ~、今日からうちに入った三木奏真くんでっす。女子の皆さん、良かったね~。皆さんご所望のイケメン君ですよ~。ではでは三木くん、自己紹介どうぞぅ!」
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