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第十七話 危ない来典者 ①
……前夜祭当日……
旧ドレル王宮では前夜祭の準備で騒然としていた。
その騒然とする中で、ドレル騎士団王族警備隊のアシャは険しい表情で、部下に指示を飛ばしていた。
「南会場の警備に、後二十名追加しろっ!……それと港の入港管理局に、入港管理を引き続き怠るなと、言っておけっ!」
「はっ!」
騎士団達も今日という日の重要さを理解してか、皆それぞれの表情は緊張感で満ちていた。
部下達に指示という激を飛ばすアシャの背後に、恰幅のよい法衣姿の老人が現れた。
「アシャよ……気合いが入っておるのぉ」
その老人の言葉に、アシャは背筋を伸ばして、すぐさま振り返って敬礼した。
「これはっ!……殿っ!」
アシャに殿と呼ばれるこの老人は……元ドレル国王であり、現ドレル首長の……ドレル13世である。
その表情は恰幅の良さも手伝ってか、とても穏やかそうな表情であり、人の良さが体全体から醸し出ていた。
「今日に至るまで、何事もなくこれたのは……お主らの働きがあってこそ……感謝しておるぞ」
ドレル13世の言葉に、アシャは恐縮した。
「なんと……勿体ない御言葉を……」
「アシャよ……少しいいか?」
ドレル13世の言葉に、アシャは怪訝な表情をした。
「はっ……」
王宮のとある一室に場所を変えた、ドレル13世とアシャだったが……ドレル13世は窓から見える外の景色を、感慨深い表情で見ている。
ドレル13世の瞳に写るのは、前夜祭の準備を活気良く精力的にこなす、騎士団や城の者達の姿だ。
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