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ー Blue Notice ー
方程式、ギター、歴史、持久走―――今週は月曜から各教科でずっとテストが続いている。筆記試験はいいけれど、実技は苦手だ。特に今日の持久走は最悪だった。太陽が照りつけるグラウンドを2周もするなんて、もはや拷問に等しい。
痛む足を引きずって、ランチが入った紙袋を抱えながら、カイルは食堂に向かって長い廊下を歩いた。今日のランチはバーガーだけど、日本人がまた珍しいスイーツをくれたのだ。柏という植物の葉っぱでモチなる物を巻いたお菓子らしい。今日は5月5日。日本では子供達がこれを食べる日なんだという。
食べ物を葉っぱに巻くなんて変だけど、あの日本人が作ったなら間違いなく美味しいはず。ちょっとワクワクしながら、美術室の前に差し掛かったその時、
「――おっ、増えてるぞ」
誰もないはずの室内から、コソコソ喋る声がした。しかも、その声には聞き覚えがある。カイルは壁に隠れながら、こっそり中を覗いた。思った通り、この癇に障る声はボブとトッドだ。腹痛を理由に持久走のテストを休んだと思ったら、こんな所でサボっていたのか。
「なぁトッド見ろよ、ほら、閲覧数が上がってるぞ」
「ホントだぁ、やったねボブ」
何してるんだろう。ボブとトッドは互いに体を寄せ合いながら、スマートフォンを見ている。どうやら何か画像をアップしたようだ。
「ねぇボブ、本当に大丈夫かなぁ?」
画面を見ながら底意地悪そうにニヤついているボブに、トッドは少し怯えながら訴えた。
「やっぱ『援交先生の淫らな休日。恋人は女子中学生』なんてタイトルつけたのはやりすぎじゃない? ボクらの仕業だってバレたら大変だよぉ。てかこの人、本当に中学生なの? 背中しか写ってないけど……」
「アホか。関係ねーよ、そんなもん」
いい気分に水を差すなとばかり、ボブがトッドを睨みつけた。チッと舌打ちしてから、苛立たしげに吐き捨てる。
「相手が誰だろうと、シフォードが写ってりゃいいんだ。それにしてもラッキーだったな。まさかグリーンヒルパークにアイツがいるなんてさ」
「そうだね。偶然だったよね」
シフォード先生が盗み撮りされた!? 危うく叫びそうになり、カイルは咄嗟に手で口を押えた。その間も美術室の中では、ボブとトッドが悪巧みを話している。
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