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「俺はサイとの縁切りを希望していますが、どうにもダメだ。今回のことも全然気が付いていなかった」
「でも……」
「でも?」
「サイは味方にしておけば損はない。その逆は絶対ダメです」
「あなたこそ何者ですか?」
ポケットから財布を取り出し、中にあるショップカードを一枚だした。
「店をやっています。ママと呼ばれていますよ。それでわかりますね?どういう男達がくる店か」
サイ、マル、ジュネ、プール。君のピースがそれで埋まるか?
「貴方みたいな人が経営しているなら、お客さんに言い寄られて大変そうですね?」
「そんなことはないですよ」
「ありますって!シュン以外に綺麗だと言える男の人に初めて逢いました」
実に率直、そして無駄がない。相手の性癖や見た目、職業、この男はそこに惑わされない。斉宮のお気に入りなわけだ。ただし符丁のもつ意味は知らないようだ。だから斉宮ではなくサイなのか?
「あなたがハタケさんを守りたいと思うなら、サイの言うように相手の出方がわかるまでおとなしくしていたほうがいい。サイは情報面で絶対間違わない」
「ジュネ!思い出した!」
どうした?いきなり。
「サイが言った「この悪行を知らせてきたのは「ジュネ」です」そして桜沢は言った「沢木は何故直接俺に言わないのか?」と。あなたは吉川の件に関わりがある」
聡いな。
「桜沢はわたしの幼馴染です」
「え!あの人と同じ歳?」
「おかしいですか?」
「いや、おかしいのは桜沢さんですよ。見た目怖すぎですよね、あの人。そう言われると二人とも年齢不詳だ。世間は狭いですね」
「運転手さん、そこの角を曲がったところで一度止めてください」
「あ、つきましたか」
「ありがとうございました。縁があればまた逢うでしょう。でも貴方のためには逢わないほうがいいのかもしれない。でも、もし困ったことがあるなら、店に電話をください。サイに話す前にね。おやすみなさい」
走り去るタクシーを見送りながら、偶然なのか必然なのかと考える。その判断はまだつかない。
機はまだ熟していない。
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