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 額にキスを落とされて、顎に指が添えられて目線が一緒になる。 「碧さんに過去にあった事を聞かされた時、覚悟をきめたんです。対峙する相手の正体を知らない俺が、あなたを守るなんて無責任に言えない。だから傍にいることだけ考えよう、それが守ることにつながればいいって。 そして桜沢さんに言われたんです」 「裕に?」 「ええ。碧ちゃんを頼むって」 「裕……」 「自分で何とかしようと思うな、自分が犠牲になるなんて考えるな。一人でかかえて事を大きくするなって。大概のことは何とかしてやれるから頼れって、連絡先をくれました」 「そうだったの」 「だから約束してください。桜沢さんの言ったことはそのまま、貴方にも当てはまります。 事が起こった時、たとえば俺を救うために自分を犠牲にすることで解決するとしてもそれは選択しないでください。 桜沢さんでもランブルフィッシュでも何でもいい、一人で立ち向かわないで助けを求めてください」  宏之を取り戻すためにわたしが必要だと言われたら、迷わず行くだろう。 「そんな約束できないよ。だって君は無関係じゃないか」 「そんなの、あ~~あ、ですよ」    宏之は枕をヘッドボードに立てかけて上半身だけ起き上がった。太ももを抱えられて跨るよう促される。わたしの腰に腕をまわして見つめる視線は真剣だ。 「碧さんの犠牲によって俺が救われたとします。そのあとどうなるかわかりますか?」 「君が無事ならいいじゃないか」 「あなたは何もわかっていない無事?どこがですか! 碧さんがいない現実を俺に強いるんですよ?貴方を失ったまま生き続けろと、そんな薄情なことを俺にするんですか!」  怒りに燃える宏之の目。あの若い男と一緒だ。体から発せられるオーラは強烈。宏之が怒るのを初めて見た。
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