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 呑み込めない唾液が顎をつたい、宏之の身体から力が抜けた。そのままベッドに押し倒して両手首をシーツに押し付け力でねじ伏せる。 「いいか宏之、よく聞きなさい。 二人が窮地に陥って、どちらかが助かる。どちらかが死ぬとしよう。 わたしがどうするか?答えは簡単。私は君を殺す、そして自分も死ぬ。 君がいない人生なら生きていないほうがずっと幸せだ。 君が助かり、わたしが存在しない?君が他の誰かのものになるのをあの世から見守る?ばからしい。 わたしのものだ、誰にもやらない。だから殺すよ、迷いもなく」  見開かれる瞳から零れる涙。絶対的な愛情と淫靡な炎が生まれ出る鍵。君の涙はダメだ……おかしくなる。 「わかった?宏之」 「……約束して。俺を安心させて。俺を……すてないで……」  宏之の瞳がみるみるうちに満たされて大粒の涙が頬をつたう。自分で言った「捨てる」の言葉に怯えるように。 「言ったはずだ、君はわたしのものだ、誰にもやらない。 どこかに逃げるというなら閉じ込めよう。逃げられないように足を潰そうか?腕をもごうか? 捨てるわけがないだろう、それはできない。 約束するよ、君を殺していいのはわたし。わたしを殺していいのも君だけだ。他人には許さない。誓いとともに君を抱く!」 ◇◇◇ 「もう……だ……め」  背中にまわされていた宏之の腕がポトリとシーツに落ちる。抱きつぶすほどに宏之を貪りつくして、ようやくわたしの心は鎮まった。
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