<10> 影

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 次の女に乗り換えたほうがいいな。最近恨みがましいことばかり言うようになった女。うんざりする。「こんなに愛して尽くしているのに!」そう何度も泣かれても、俺は助けになれないよ。だって、俺は愛してなんかいないから。  腫れぼったい目を化粧でごまかし仕事に出かける女にキスをしながら、俺の考えていたことはそんなクズなこと。悲劇のヒロインぶった女は沢山いる、傷を舐めあうことを愛だと勘違いしている女も同様。  女を送り出したあと、退屈シノギにTVをつけた。ニュースを読み上げるアナウンサーにウンザリして、リモコンの番組表ボタンを押す。俺に政治や経済はかんけ~ねぇよ。 『以前より出馬が囁かれていた、水原信次郎氏の長男で、元大手銀行員の水原信輝さんが出馬を表明しました。それでは記者会見の模様です』  みずはらのぶき?オヤジさんが大物だと人生楽だろうな。 『この度、わたくし水原信輝は』  いいとこのボンボン、さすがにいいスーツ着てるねぇ。  あれ?どこかで会ったか?どこかでみたぞ、この男。ニュースじゃない、雑誌?いや違う……どこだ?  リモコンの(戻す)ボタンを押して、番組表の左隅に映っていたニュースチャンネルを大画面に戻す。  映りこむ男の顔……どこだ、どこで見た? 「……。……。……。……!!」  PCのモニターだ!新聞を読んでいたのを蒼が確かめた。  あの時クスリのせいで蒼のエロさは凄まじかった。よく押し倒さないでいれたもんだ。思い出すだけで勃起しそうになる。 『まず、隣のドアに体当たり、ローターのスイッチはそこでいれてくれ。顔をみられないように、すぐに逃げること』  そうか、そうか!あのホテルだ! 『日本の皆さんのために尽力する、これを実現するために出馬を決心いたしました』  いやいや、あんたは日本なんて大げさなモンじゃなく、俺のために尽力してくださいよ。さて、どうやってまとめあげるか。  まずは蒼の男を一人に絞る必要がある。せびった金で財布はふくれたから尾行はネットリやってやろう。  次の女を探す手間がはぶけそうだ。大金が転がり込むかもしれない。期待感に胸が躍った。
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