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宗太はその音のする方に向かった。
……音源は宗太の住む家と隣の家との間だった。
「おい、声でかすぎだろう。」
宗太は歌声に負けないくらい大きな声を出して注意する。
こちらに背中を向けて、竹ボウキを動かしていたやつが歌うのを止めて動きを止めた。
そいつの正体を知っている宗太は動じない。
「歌いたいなら、家の中で歌った方がいいんじゃないか?」
宗太はそこまで言ってから、黙る。
すると、背中を向けていたやつがこちらを向いた。
「僕、庭掃除を頼まれちゃって、寂しいから歌ってたんだ。宗太、来てくれて嬉しいよ。手伝ってくれない?」
上目遣いになって、目をパチパチさせながら持っていた竹ボウキを差し出すお隣さんで幼馴染みの星司。
「……」
宗太は黙って竹ボウキを受け取る。
可哀想だと思ったからじゃない。
こうやって甘えれば周りが手伝ってくれると知っていてやっているやつに俺は口を開くのが面倒なだけだ。
「ありがとう!やっぱり、宗太は僕の王子様だ!」
その言葉に、俺は顔を逸らして口元に自嘲の笑みを浮かべた。
それがただのおだてだとわかっているからだ。
こいつは俺の気持ちに気づいていてこんな言葉を口にしているのだろうか。
「ま、うちの庭にも落ち葉がたんまりあるから、ついでだ。」
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