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宗太は、そう言って利用されてやる。
小さい頃から可愛く甘えて周りを使っていた星司に、宗太が嫌がって反発した時のことがあるから今ではできるだけ断らないようにしている。
もう、星司にあんな悲しい顔をさせることが嫌なのだ。
……いつもニコニコとしている顔が、初めて悲痛に歪んだ瞬間。
その表情を自分がさせてしまったのだという事実に胸が張り裂けそうになった。
それからすぐに、他人とうまく付き合っているように見えて、実は興味を持っていないということと、星司の両親が実の親ではないということを知った。
普通だったら、たかが頼み事を断ってケンカをしただけ。
端から見たら、そんな大したことではないのだろうが、その一件で宗太は自分の気持ちに気付き、星司にそんな顔をさせないと心に誓った。
そんな宗太の心を知ってか知らずか、相変わらず星司は宗太に甘えながら頼み事。
二人の関係はそれから全く変わらず約十年。
宗太はもどかしく感じるところも歯痒く感じるところも通り過ぎ、今では仙人のように静かだ。
もちろん、それはそんな感情がなくなったという訳ではない。
ただ、抑えて黙って耐える術を学んだというだけだ。
「全部、この辺りに集めていいのか?」
宗太の問いに星司が頷く。
「二軒分山にしたらどれくらいの山になるかな!」
目を輝かせてこちらを見る星司に嬉しくなりながら、辺りを見回す。
「セイの身長くらいいくんじゃないか?」
手で星司の身長の高さくらいの山を描いて見せると、星司が頬っぺたを膨らませた。
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