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事前に用意していた言葉も詰まってしまって言い出せなくなってしまった程だ。
付き合っていた訳ではない、ただの友達だった彼女がこの世を去ったことには自分も大きな悲しみを感じていた。
しかし、俺は葬儀の間彼女の顔を見ないように心掛けた。
君が死んだことを受け入れたくなかったからだ。
だから俺は自分に暗示を掛けた。
棺桶の中には誰もいない、彼女は死んじゃいない、俺の中で生き続けているのだと。
そうして、受け入れないようにした。君の死を。
思えば、あの葬儀で自分は全く涙しなかった。
高校の同級生達は皆泣いていた。彼らが彼女と過ごしたのは高校のたった3年間だ。
だけど俺は15年も一緒にいた。でも、泣かなかった。
我慢していた訳では無い。ただ涙は一滴もでなかった。
夜空を見上げた。だが今は雨だ当然、星は見えない。
そもそも東京で満天の星空を拝めることなど滅多にない。
ただただ差している傘に雨粒がポツポツと落ちる音。
それだけが聞こえていた。
雨が頬を伝って落ちた。
おかしい、傘を差している筈なのに……
しかし、それは止まらなかった。
ひとつ、またひとつと零れ落ちていった。
くそう……なんで泣いてるんだよ……ちくしょう……悲しくなんか……ない……あるわけ……
分かっていた…分かっていたんだ。
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