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それではと、先に教室を抜けるが、お札を受け取ったそばから見えなくなっていたのはすごいとしか言いようがない。ちょっと値は張るけれど、お値段以上の価値がある。
いい買い物をしたなと、ホクホク気分で講義を受けて、すべて終われば家――アパートへと直行する。要は大学近くの学生アパートだ。ワンルームの。
家事というか、自炊はときおり面倒にもなるが、今日も今日とてほどほどで過ごす。私に完璧を求めてはいけないよ。ちなみに、お札は窓の右側の壁に貼りました。壁と対象物が傷つかないタブタイプの粘着材を使ってね。
白米と冷蔵庫のありあわせで作った豚汁もどきと野菜炒めという夕飯を平らげたのち、お風呂に入って一日の疲れを癒した。やっぱりお風呂には勝てないよなー。眠気が勝る日はシャワーで済ませるけど。
寝る前の日課となっているレポートを書き進めたあと、USBに上書き保存をしてノートパソコンの電源を落とす。時間にして午後十時半。寝る時間がやってきたわけだ。
いつものように歯を磨いて敷いたお布団にくるまり、さて寝るかと電気を消そうとリモコンに手を伸ばした刹那――背中に強い衝撃が走った。息が詰まるほどの。
「っ……!」
なに、なにこれ! 重い……! 息苦しさとのりかかるような重さしか解らない。『わたしの』『わたしの』と呟くような声を聞いたあとはもうパニックに陥るしかなかった。助けを呼ぼうにも声が出ないし、這い出そうにも躯が動かない。――指先以外は。
それでも、これが『繋がれる』――『憑かれる』ことなのだと、どこか冷めたなかで思う。どうしてだか。
ああ、私はどうなってしまうのだろう。
不安が躯を蝕んだあと、徐々に意識が薄れていく。次に目を覚ましたときには、芒くんの顔があって驚いたくらいだ。思わず飛び起きてしまいましたよ!
「おほぅっ!? なっ、なんですか!? なんで芒くんがここにぃっ!?」
「――あ、起きた? 躯は大丈夫? 貞照院さんが『繋がれる』前に助けたんだけど、怖い思いをさせてごめんね」
「はあ……」
なにがどうなっているのかさっぱり解らない。まだ心臓がバクバクしているが、あまりの非現実さに頭の方は冴えていく。こんなときでも。いや、こんなときだからこそ、冷静にならなくては。
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