第1章

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なんだかだるそうな顔をしている。 「次のシフトの新田さんなんだけど、事故で交通規制されてるから、遅れそうだって」 「マジですか。スリップでもしたんですかね。那古さんは大丈夫かな」 海を見ると、大きな生き物が暴れるように荒れていた。海の向こうの空が光り、間もなく雷鳴が響き渡る。今日のバイトは、なんだか長そうだ。 *****  目を覚ますと、涙が流れていた。何の夢を見ていたのか思い出せない。必死で記憶を辿っていた。すると、朧気ながら何かが頭をよぎる。長い髪。白いブラウス。冷たい目。  その瞬間、うっすらと思い出した。ああ、母の夢だ。  また涙が流れた。こんなとき、何となく死にたくなる。なんで私は、彼女に縛られながら生きていかなければならないのだろう。もう、目の前にはいないと言うのに。  ――ピピピピ  その時、私は初めてアラームが鳴る前に起きたことに気づいた。涙を拭い、アラームを止める。ボーッとする頭を起こして台所へ向かう。  ――ジジジジジ  トースターの音が部屋に響く。冷蔵庫を開けてマーガリンを探す。  ジジジジジ  ああ、こんな少しのことで思い出すんだ。いつかの朝食もトーストだった。  ジジジジジ  あ、もう、作り置きも少なくなってるな。ちょっとだけ野菜切っておいて、帰ってきてから料理しようかな。  ジジジジジ  まな板を用意する。トマトを冷蔵庫から出す。包丁を手に取る。  ――チンッ  ――ダンッ! 「!!」  ハッとした。足下に、包丁が横たわっている。危ない。あと少しで、足の上に落ちるところだった。 恐怖の後に怒りがこみ上げる。なぜ、こんな思いをしながら生きていかなければならないんだろう。いつまでも、こんな思いをしながら生きていかなければならないんだろうか。ならば、もう―― 「――……」
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