離したくない

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「お、茜ネイルかえたんだな」 パソコンに向かってると聞こえてきたそんな声。 「うん。かわいいでしょ」 「シンプルだけど、いいな。似合ってる」 ふと茜の席に目をやれば、ニコニコと両手の甲を塚田に向けてる。 塚田もそんな茜の指に手を触れてるし、フツフツと怒りがこみ上げてくる。 「俺のなのに」 そんな俺の呟きにも誰も気づかない。 社内では俺はただの茜の教育係。 「でも、茜が白のネイルって珍しくない?」 「まぁねー。これにはちょっと理由がね」 そんな声が聞こえる。 「……白?」 俺はふとカレンダーに目をやる。 「今日って9/14だよな」 茜のネイルが白と聞いて、俺には一抹の不安が残る。 「セプテンバー・バレンタイン」 紫色の物を身に附け、白いマニキュアを塗り、緑のインクで書いた別れの手紙を直接手渡すという日。
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