離したくない

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「まだ終わりにしたくねぇし……」 先々月の恋人の日は本来スイーツのところをネックレスを茜に渡した。 だから今回はそのネックレスについてる石がブレスレットになったものを買った。 「そういえば……」 茜が置いてった書類に目をやる。 「あっ……」 書類を持ち上げれば一番下の紙に付箋がついていた。 〝昼休み、いつもの所で〟と書かれていた。 緑のインクで。 「緑……?」 まだ、別れの言葉が書かれていたわけではない。 でも、もしかしたらあそこで別れを告げるための手紙を緑のインクで書いたのかもしれない。 あまりに重なる偶然に俺の思考は停止する。 「……行きたくない」 はじめて、茜からの誘いを断るという判断に至る。 茜にもしも別れを告げられたら、午後から仕事なんて出来るはずがないから。 どうせなら仕事が終わってから聞きたかった。 俺はスマホを取り出して、茜に〝ごめん、今日は昼休みに用があって行けない〟とLINEをしておく。
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