さいかいは悔恨と安堵

60/69
前へ
/669ページ
次へ
「オススメは?」 「ペコリーヌロマーニとサンジョヴェーゼキャシーね」  ごめん、全く解らない。任せた。 「そ、そうなんだ。一緒のでいいかな」  少し待っていると、紫の液体が入ったグラスと、三角に切りそろえられたオレンジ色の謎スライスが出て来た。 「どうぞ召し上がれ」  ストローで飲んでみる……あ、これぶどうのジュースだ。でも何か混ざってるな、ハーブとかそんなのとヨーグルト的な? 凄く美味しい。  自然と笑みがこぼれる。 「これはチーズですか?」  それにしては色が随分と濃い。食べたら解るって言われて納得する。  風味豊かなチーズだ、でもクセが強い。これを口にしてジュースを飲むととっても合う。 「そうやって笑顔で居ると凄く可愛いわよ」 「フラウさん、ヨダレ拭いてください」  交互に口にして楽しむ。こういうのって贅沢だなあ。 「それは羚羊のチーズで、サンジョヴェーゼ種のぶどう果汁にサフランとヨーグルトを混ぜたものよ」  カモシカってなんだ? しかし、何で誰も客が居ないんだろ。  デパートの中は結構な賑わいだったってのに、どういうことだ。
/669ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1847人が本棚に入れています
本棚に追加