さいかいは悔恨と安堵

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 フラウさんが椅子に座ったまま尋ねる。そういえばそんな貴族の名前がファイルにあったような気がする。何で見かけたんだったか。 「そうだよ、俺の大伯父がそのエックハルト侯爵だ」 「うわー、メンドクサ――」  相手に聞こえないようにそう小さく呟いたのが耳に入る。  あの尋常ではないしつこさ、確かにめんどくさいよ。デパートの方も、外の通りの方も居るから植え込みから外に逃げるか。 「今日は逃がさねぇぜ、それにあのイーリヤ家の奴もいねぇようだしな」  ガサガサと物音をたてて植え込みの間から風体の悪い奴らが更に十人単位で現れた。  うわぁマジかよ。ってかグロリアさんって何気に有名人だったのか?  こんなところで魔法使って後で酷い目に遭わないかが不安だ。 「フラウさん、巻き込んですみません。私が目当てらしいので一人で戻ってください」 「こんな沢山よ、アリスだけでどうするつもりよ」  沢山なんて数じゃない、どうなってるんだか。 「何とかします。買ってもらった服、ありがとうございます。持っていってくれると助かります」
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