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◇
気づいたら見知らぬ草原に居た。いつからここに居たのか全く覚えていない。
風が吹いて丈が長い草が揺れている。空は青いし陽射しは優しい、春……だろうか。
思い出そうとしても記憶の混濁が激しくて、色々なことが渦巻いてしまっていて考えがまとまらない。
「そう――」
ドーン!
何かを思い出し掛けた時、急に地面が大爆発を起こした。咄嗟にその場に伏せた、身に沁みついた行動は無意識にそうさせた。
爆発したのはどこからか飛んできた砲弾だった、それが目の前で次々と爆ぜていく。
冗談じゃ無い! どこか避難できる場所を!
こんな平地に居たら運が良くても即死で、そうでなければ重傷で苦しんでから死ぬことになってしまう。
必死になって這って岩陰に隠れた。
ここは戦場だ、それも競合地帯の!
敵も味方も姿が無く、砲撃があったということはどちらかがこの後に突撃して来ることになる。
味方であってくれよ、敵ならお終いだ!
激しい鼓動を押さえ込んで呼吸を整えようとする。金属が軋む音が聞こえて来た、それは地のうねり、丘の先からこちらへとやって来る。
目を凝らしてその音の主を見詰める、灰色の箱、死の代名詞、主砲を備えた暴力の権化、戦車が姿を現した。
味方じゃない! 旧式のものだ、しかしどうしてそんなものを?
動けば撃たれる、かといって黙っていても同じこと。
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