第2章 戦い

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目の前の光景に異様さと既視感を覚えつつ、俺は現実逃避をしていた。 正直、頭が、目が、訴えかけてくる情報に心が混乱状態を引き起こし、少しでも状況を整理したかった。 そう……これは、謎のメイドさんが俺の居た部屋に来て、衝撃的な着替えをさせられた後、俺はサン・ライト王国の王城のなかのひとつである太陽宮と言う場所に連れてこられたところから始まったのだ。 メイドさんの話では、王と謁見するためらしい。 正直、気乗りなんてするはずなかったが本来ならこの国に来た後にすぐに謁見する予定だったので俺の自由意志で決められる問題ではなかった。重い足を懸命に動かし、前を歩くメイドさんについていく。 (……敗戦国の王族をわざわざ連れてこさせるくらいだ。さぞかし性格が悪い王様なんだろうな。) まだ、会ってもいないが憂鬱になる。しかし、性格が悪ければ早めに俺は殺してもらえるだろうとも思う。見目は悪いし、喋れない。身体もボロボロ。 すぐに用済みとなるだろう。 (早く、その時にならないかな) そう考えれば先程の憂鬱な気持ちはどこかに吹き飛んでいた。 前を歩くメイドさんに悟られないように薄く(わら)う。 カークの足取りはどこか軽やかだった。 ここまではいつも通りだった。けれどこの後、白昼夢を見ていたような感じになったんだ。 この時はそれがなんだったのかわからなかったが、 玉座の間(謎のメイドさんに教えてもらった)に入り、黄金の雨を見たことにより白昼夢の内容を断片的にだが、思い出したのだ。 そこから、精神が不安定になった。性格には、これからの処遇と自分が怖くなった。 こんなこと、今まで一度もなかったのに。
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