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痛いほどの沈黙が続いた。
ナルカーリャの時とは違う静寂。
あのときは、静かさのなかに王の怒りが隠れていたが、今は怖いほどなにもない。
その時間は当事者である、王女と元王子には悠久のような時に感じたが、王にとっては瞬きほどの時間であった。
そして、沈黙のすえに王は答えを出した。
「いいだろう。第4王女よ、そなたにルナ・ムーンライト王国元第3王子カームデンブルク・ド・ルナ・ムーンライトの身柄を預けよう。」
「ありがたき幸せにございます、陛下。」
誰もが見惚れるような笑みで以てその結果を受け入れる王女。彼女の周りは花が幻視できるほど嬉しげな雰囲気で包まれている。
一方対照的に何時ぞやの"裏切られた"にぴったりな雰囲気を醸し出す元王子。
その瞳は深い絶望で縁取られ、紫水晶の輝きは鈍く光っている。
王女は気付かない。後ろの気配を察知できるほど彼女は手練れではないし、敏感でもない。
王は気付いているのか、いないのかすぐに果たされた誓約を解除し、元王子の"従属の首輪"の主の更新をしようとしている。
トントン拍子で進められていく話は彼を置いてけぼりにしていく。
彼が我に返った時には既にその話は終わり、彼の家族達の処遇についてという新しい話が始まっていた。
彼には、新しく始まった話の結末などへの興味は皆無だった。
彼が興味があったのはただ一つ。
けれど、それが許される日が来るのは自らが自然に死ぬ日しかあり得ないと彼は痛いほど分かっている。
戦いは、王女の勝利で幕を閉じた。
彼女は初めて家族へと挑んだ勝負に勝ったのだ。
しかし、代償は大きく、彼女は近い将来それを返さなければならなくなるだろう。
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