第3章 生活

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流石におかしいとアイリスも思った。自分がこれから大変な目に遭うかもしれないというのに即決である。 ゾワリとアイリスは再び嫌な予感がした。 彼を注視する。 …………。 …………。 …………。 ………っ!? よくよく見てみればカームデンブルクはアイリスを見ていなかった。見ているのは、アイリスの知らないどこか。けれど、標準だけはアイリスに合っているので端から見ればきちんとアイリスを見ているように見えるだろう。だが、アイリスからみればそれは嘘だ。 見られていると思われている側だからこそわかる。 カームデンブルクはアイリスを通して彼にしかわからない場所を見ている。 どうなっているの……? 瞳はドロリと濁り、生命の輝きを有していない 私は間違ったの? 唇は笑みを形作らないばかりか、動こうとすらしない 喜んでいるようになんて到底見えないわ。 むしろ、これは 諦め。 そして、期待。 それも良い方向ではない。悪い方向への期待。 身近だったはずだ。 味方がおらず、周りは敵。 虐げられた日々。 砕かれた心。 治るものなんかじゃないのに……! 救いは罰であったはずなのに……! これじゃあ、ただの自己満足じゃない……! わかっていたはずなのに……! アイリスは生まれてからずっと姫だ。 カームデンブルクは生まれてからずっと奴隷だ。 これはふたりの差。     
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