第3章 生活

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侍女の女に通されたのは、目覚めた時に居た部屋だった。鉄格子を嵌められた窓から黄金の城が見える。何も変わってなかった。余談だが、ララと名乗るメイドはサン・ライト王国では侍女という役職になるらしい。"太陽"が聞いてもいないのに色々と教えてくれた。 「ここが今日からあなたの部屋となります。ご用がありましたら、こちらに付いているベルを鳴らしてください。参りますので。」 そう言って、ララという名の侍女は去っていった。その間、全く表情は動いていなかった。死んでいるようにさえ見えた。自分でもああではないだろう。もう少し動いてるはずだ。 (なんで動いてなかったんだろうな) 普通、奴隷の身分で人を呼びつけることなど許されない。なのに、呼べとベルがある。これは、嫌がらせだろう。どう見たって。 間抜けを晒せと囁かれた気がした。 恥を見せろと、愉しませろと。 そう考えたなら、嘲笑うのだ、人は。 さぞかし愉快に、愉悦を噛み締めて。 まだ、足りないのかな この程度では愉しめないほどに貪ったということだろうか。 ……想像以上の生活になりそうだな。 侍女であれならば、主はもっとだろう。 先を考えるとどっと疲れた。幸い、今日ぐらいは甘い夢を見させてくれるようだ。 ちらりとベッドを見る。 流石にそこで寝たなら叩き起こされるだけじゃ済まないだろう。目覚めた時は不可抗力だろうけど。 仕方がないので、ルナ・ムーンライト王国でもしていた『場所』で寝ることにした。誰にも怒られず、主人の機嫌も損なわない、そして、どこにでもある場所。 横になれば、あっという間に眠気が襲ってきた。 疲れていたのだろう。 何も思わず、何も感じずただただ疲れを癒すためだけに。 だから、気付かなかった。 いつもなら気付くのに。 目を開けたときには、彼女は俺の目の前に居た。
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