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問題のない世界
「恋愛は、とても素敵な事なんだよ」
彼女が口にしたその言葉に、僕は共感する事は出来なかった。
それは、とても単純な理由――。
僕は、恋愛をした事がないからに他ならない。
他人を想い心が浮かれる様な感覚や、手が触れただけで鼓動が速くなる事もなく――、そもそもが他人同士、理解し合えるはずもないのだから。
僕が考える恋愛とは、一人で生きて行くには寂しいから慰め合う行為――。もしくは、辛い人生で傷ついた心を舐め合う事――。
どちらにせよ、理解し難いモノである。
そんな、一般的な感覚とズレている僕に対して、拒絶するわけでも好奇心を示すわけでもなく、別け隔てなく接する彼女の純粋さ――。
透明感を――。
僕は単純に、酷く気持ち悪く想う。
人間がこんなにも純粋で、綺麗な心を持っているのだと思うと、僕が何とも汚れていて世界から疎外されている様で、惨めな気持ちになる。
そして今日も、問題のない世界が始まる。
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