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「う……ん?」
実母の掃除機の音で目が覚めた只野。
未だ、目覚めきっていないせいかそれとも薬のせいか、はたまた別の要因か?
自分が何者でここがどこかを認識するまでには、しばらく時間を要した。
「ここは……。」
徐々にはっきりしてくる現実。
そう、只野は医者からもらった診断書を持って、会社に行った。
恐怖と不安で身動きがとれなかった只野は、実母と妻を引き連れて会社の人事担当と話し合ったのだった。
予想外に人事担当は理解を示し、先ずは1月間の休職を受理したのだった。
車の運転は妻がしていた。
とても只野に運転を任せる様な状態ではなかったからだ。
その後の只野の生活は一変していた。
食事も満足にとれず、布団から起きあがることもほとんどなかった。
かろうじて薬は飲むが、1日の大半を寝て過ごしていたのだ。
「あ、おっ君。
起きたのなら何か食べる?」
実母は掃除機を止め、只野に優しく語りかける。
「いや、いい……。」
只野は弱々しく返事を返す。
反対を向けば、同じように伏せっている妻がいた。
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