第1章 取り戻せない日常

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  「う……ん?」 実母の掃除機の音で目が覚めた只野。 未だ、目覚めきっていないせいかそれとも薬のせいか、はたまた別の要因か? 自分が何者でここがどこかを認識するまでには、しばらく時間を要した。 「ここは……。」 徐々にはっきりしてくる現実。 そう、只野は医者からもらった診断書を持って、会社に行った。 恐怖と不安で身動きがとれなかった只野は、実母と妻を引き連れて会社の人事担当と話し合ったのだった。 予想外に人事担当は理解を示し、先ずは1月間の休職を受理したのだった。 車の運転は妻がしていた。 とても只野に運転を任せる様な状態ではなかったからだ。 その後の只野の生活は一変していた。 食事も満足にとれず、布団から起きあがることもほとんどなかった。 かろうじて薬は飲むが、1日の大半を寝て過ごしていたのだ。 「あ、おっ君。 起きたのなら何か食べる?」 実母は掃除機を止め、只野に優しく語りかける。 「いや、いい……。」 只野は弱々しく返事を返す。 反対を向けば、同じように伏せっている妻がいた。
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