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この間はありがとう。お礼も何も言えないまま1ヶ月も経っちゃってごめんね。明日の放課後、体育館の裏で待っています。
昭和の時代はこんな風にして手紙をやり取りしたのかな?
僕はそんなことを思いながら麗奈ちゃんの机に手紙を忍ばせた。
運命の14日。
僕は昨日百貨店でお小遣いをはたいて買ったプレゼントを持って体育館裏に向かう。
体育館の横から覗くと、麗奈ちゃんがの姿が見えた。
自分でも驚くくらい足元が震えている。
落ち着け、落ち着け。
よし。
と自分に言い聞かせた瞬間、声が聞こえた。
「あいつ本気にしたのかな」
後藤の声だ。
「ハハハ、のろすけの分際で麗奈と付き合えるなんて思うわけないだろ。もし思ったなら典型的なアホだわ」
蛯原が笑っている。
「でも勘弁してよ。いくら彼氏であるアンタの頼みとはいってもさ、あんなブヨブヨの運動オンチには義理チョコすらあげたいと思わなかったんだから」
僕は耳を疑った。そう言い切ったのは麗奈ちゃんだった。
「だいたい、部活に来させようとしてたのもアンタたち2人がのろすけを指さしてからかいたかったからでしょ?巻き込まないでよ。めんどくさい」
そうなんだ。僕のためじゃなかったんだ。
「悪い悪い。でもさ、あいつの動揺した顔、本当に面白かったわ」
後藤はそう言うと、大声で笑いだした。
「あいつ、もうすぐ来るはずだよ。俺たちは隠れて見させてもらうわ」
蛯原はそう言うと、草むらの陰に後藤と一緒に隠れた。
僕はプレゼントをそっとリュックに閉まって、その場を立ち去った。
日が落ちるのが遅くなり、まだ空はオレンジ色。でも、そのオレンジ色がぼやけて見える。僕は公園の自販機でブラックのコーヒーを買った。
苦い。こんなに苦いものがこの世の中にあるんだ。
僕は苦味を口の中でしっかりと噛み締めた。
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