第3章 決起

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春休みはいつの間にか過ぎていく。思えばこの春休み、ほとんど何にも手につかなかった気がする。それほど、あのできごとのダメージは大きかった。 春休みの最終日。ベランダからは7分咲きの桜が見える。誘われるように僕はあの日の公園へ足を運んだ。 華やかなピンク色の花びらさえ、グレーのバイアスがかかって見える。 どうせ僕はのろすけだ。 ぽつりぽつりと公園を歩くと、自販機があった。あの時、ブラックのコーヒーを買った自販機だ。 僕はもう一度ブラックのコーヒーにチャレンジした。 変わらない。苦い。あのときと変わらない。 でも、このまま、ただののろすけでは終わりたくない。苦い思いだけで終わらせてなるものか。 僕は決めた。闘う!絶対に結果を出す! 始業式の日、僕はおそるおそる職員室の扉を開けた。向かう先は数学の担任で水泳部顧問の高岡先生のもとだ。 「あの……高岡先生」 「お?野呂さんじゃないか。どうした?」 高岡先生は笑顔でたずねてきた。 「僕はもう3年生です。最後の年です。こんなこと言うのは自分勝手なのも分かっています。でも、絶対に今年、県大会に行きたいです。3ヶ月しか時間はないし、今までサボっていたツケもあるけど、死ぬ気で頑張ります。よろしくお願いします」 僕は深々と頭を下げた。 「……なるほど」 高岡先生は言葉を詰まらせた。怒られるのだろうか。 「……まぁ、やる気になったのはいいことだ。やるだけやってみろ」 高岡先生の言葉は正直、意外なものだった。どういう気持ちで言ったかは分からないけど、今回は、僕ひとりでは多分どうしようもない。 「よろしくお願いします」 僕はもう一度高岡先生に頭を下げると、職員室を出た。不安だらけだけど、やるしかない。
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