第4章 たったひとつ

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「たったひとつ?」 僕がそう訊き返すと、高岡先生は黙って頷いた。 「ところで、野呂さんはこの間のスポーツテストの1500m走、記録はどうだった?」 「えっ?6分10秒でしたけど、それがどうかしましたか?」 意外な質問に僕はきょとんとした。 「ゴールしたとき、思ったより後ろに人いただろ?」 「言われてみれば……」 確かに、他の種目はだいぶボロボロだったけど、言われてみれば1500mだけはクラスの真ん中くらいだった。 「それに、今日の練習、意外とついてこれたような気がしなかったか?」 「はい。最初は2、3本でついていけなくなると思っていましたが、なんとかなりました」 そう僕が言うと、高岡先生はニヤリと笑って、こう言った。 「野呂さんに残された唯一の可能性、それは、1500m自由形だ」
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