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「たったひとつ?」
僕がそう訊き返すと、高岡先生は黙って頷いた。
「ところで、野呂さんはこの間のスポーツテストの1500m走、記録はどうだった?」
「えっ?6分10秒でしたけど、それがどうかしましたか?」
意外な質問に僕はきょとんとした。
「ゴールしたとき、思ったより後ろに人いただろ?」
「言われてみれば……」
確かに、他の種目はだいぶボロボロだったけど、言われてみれば1500mだけはクラスの真ん中くらいだった。
「それに、今日の練習、意外とついてこれたような気がしなかったか?」
「はい。最初は2、3本でついていけなくなると思っていましたが、なんとかなりました」
そう僕が言うと、高岡先生はニヤリと笑って、こう言った。
「野呂さんに残された唯一の可能性、それは、1500m自由形だ」
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