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「根拠はちゃんとあるぞ。1つは野呂さんのターンがめちゃくちゃ下手なことだ」
「……それ、根拠なんですか?」
僕は眉を細めた。でも高岡先生は大真面目に話を続ける。
「ああ。大事な根拠だ。学校のプールは25m、大会のプールは50m、単純計算でターンの回数は半分だ。これだけで今のタイムから10秒以上は縮まる」
「でもそれだけでしょう?」
「それだけじゃないぞ。2つ目は、野呂さんのキックが下手なことだ」
「……またですか」
僕はちょっと落胆した。
「言い方が悪かったな。要するに腕を重視した泳ぎ方になっているってことだ。バタ足を少なめに、プル、つまり腕を主に使う泳ぎ方は、短距離より長距離の方に向いているといわれているからな」
「これ、軽くディスられていませんか?」
僕はポロっと高岡先生に本音を漏らした。
「そう感じたなら悪かったな。じゃあ最後に1番の根拠を示そう。野呂さんの1500m走のタイムだ」
僕は目を見開いた。
「でもあれ、たいして速くないですけど……」
「普通なら、な」
高岡先生は頷いた後こう答えた。そして話を続ける。
「野呂さん、体重何キロだ?」
「77キロですけど」
「全国平均タイムは、あくまで全中学生の平均だ。個人の体型などは考慮していない。そして、長距離走は一般的に体重は軽い方が有利だ。野呂さんの体重で6分10秒っていうことは、これは野呂さんが実は相当な持久力を持っていることの現れなんだ」
僕ははっとした。僕の表情を見て、高岡先生はゆっくりと話を続けた。
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