第6章 自分の点数を、自分で決めろ

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「ねえ、教えてよ。この問題」 麗奈ちゃんが僕のところへ数学の問題集を持ってやってきた。今日は中間テスト。一限は高岡先生の数学だ。 「ああ、これはこうして……」 僕はルーズリーフに図を描きながら解いていき、麗奈ちゃんに正解を示した。 「ありがとう」 そう言うと麗奈ちゃんは笑顔で席に戻っていく。 僕は何をしているんだろう?あれだけ傷ついたのに。頭の中をモヤモヤが包み込む。 そんなことを考えているうちに、試験監督が入ってきた。問題用紙が配布される。いくら何度も受けているとはいえ、この緊張にはなかなか慣れない。しかも高岡先生の数学のテストはかなり難しいことで評判だ。本人曰く、ウン十年数学の先生をしているが、0点を出したこともなければ、100点を取らせたことも一度もないんだとか。前回の学年最高点は僕が出したのだが、それでも88点である。 実は高岡先生、定期テストでは伝説をひとつ残している。 高岡先生は数年前、こんな問題をテストに出したのである。 (1)次の文が数学的に正しいか正しくないか答えよ。(配点3点) (2)(1)で正しいと答えた者はそれを証明し、正しくないと答えた者は具体例を挙げて説明せよ。(配点12点) 2つの三角形の二辺と1つの角がそれぞれ等しければ、その2つの三角形は合同である。 教科書をしっかり読んでいれば(1)が誤りなのはすぐ分かるのだが、(2)が難儀だった。教科書の範囲を外れていないはずなのに、誰も手が出せない。結局この問題の正解者は学年で1人も出なかった。 ……ラストの配点12点の問題の正解者がゼロ。ここまでは毎回のことなのだが、なんとこの問題、その年の京大の入試でほとんどそっくりそのまま出題されたのだ。中学2年の定期テストと同じ問題が大学入試、しかも超難関国立の京大入試でズバリ的中など、前代未聞であった。 高岡の問題の中には12点分、異次元の問題が存在する……この噂は学年を超えて全校に広がった。その数学のテストが、今から始まる。
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