第7章 固定観念

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「よし、みんな出席番号順に答案を取りに来て」 高岡先生がそう言い、数学のテストが次々に返されていく。悲鳴とざわつきが聞こえる。今回も皆苦戦したらしい。僕は前回と同じ、88点だった。 「今回、学年最高点は、97点だ」 クラス全体がざわついた。この数字は、最後の難関を突き崩す手前まで行った者がいたことを表していた。なにより僕がショックだった。僕は手も足も出なかったのに。 「ちなみに今回、最後の問題は完答者が1人出たぞ。12点問題を完答されたのは、初めてだ」 「先生、でもあの問題、どの数字を入れても余りゼロになりましたよ?」 麗奈ちゃんが高岡先生に言った。 「その通りだ。あの問題は、どの3桁の数字を選んでも余りはゼロになる。だからあの問題を闇雲に解いていたら、いつまで経っても0点のままだ」 教室がざわつく。そんなのアリかよという声、部分点狙いが裏目になったという声、阿鼻叫喚が教室内にこだました。 「じゃあ正解は何だったんですか?」 僕は先生に訊く。 「どの3桁の整数も挙げたくありません。なぜならどの数を当てはめても余りはゼロになるから。これが正解だ」 教室が再びざわつく。その中で高岡先生は解説を続ける。 「問題で指示された6桁の整数は必ず1001の倍数になる。1001は7×11×13だから、1001は13の倍数である。よって問題で指示された6桁の整数は必ず13の倍数になり、13で必ず割り切れてしまう。とすればどれを当てはめても0点になってしまう。だから私はどの3桁の整数も挙げたくありません。こう書けば12点満点だったんだ。まあ、文字式を使って説明する必要があるからもう少し解答の形は変わるけどな」 そう言って高岡先生は板書をはじめる。よくよく見ると、この摩訶不思議な問題の模範解答は、教科書に載っている問題の解法を組み合わせただけのシンプルなものになっていた。
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