第1章 僕は運動ができない

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「部活、来なさいよ」 2年生になって同じクラスになった麗奈ちゃんから今日も言われた。 「うーん…でもなぁ」 「いいから来なさいって。いつまでも速くならないわよ」 この会話、5月になってプールに入れるようになってからほとんど毎日だ。出たくないのに。ウザいなぁ… 「まぁ、考えとくよ」 ぼくはお茶を濁した返事を麗奈ちゃんにした。部活に出るつもりは、ない。 うちの水泳部では練習の出席率が低くても大会の出場に大きな影響は出ない。強いて言うなら希望の競技に若干出にくくなるくらい。だから部員の部活に対する温度差もかなり大きい。僕みたいな幽霊部員もいれば真面目に部活に参加する人も、さらにはスイミングクラブの選手コースで独自の練習をする人もいる。練習しなくても大会は出れる。いやむしろ、大会に出なくていいならむしろ好都合なくらいだ。そうすれば僕は恥をかかずに済む。後輩より遅くてバカにされるくらいなら、練習なんて出ない方がいい。試合なんて出ない方がいい。 僕は、幽霊部員を極めるんだ。そう心に決めていた……はずだった。
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