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19 昼休みの保健室
昼休みになったので、売店で悠の分もパンを買って保健室に向かった。
カーテンのところまで行き中に入ると、悠が眠そうにベッドの上で正座をしていた。
「悠」
名前を呼ぶと、寝ぼけたような顔でこちらを見る。
「カイト、ここ、どこ?」
「学校の保健室」
「どうりでなんか、そんな感じ……」
そう言って、俺を抱き寄せてベッドに座らせると、膝に頭を乗せて目を閉じる。
「メロンパン食うか?」
「食う……」
そう言っても起きない。
「よく寝れたか?」
「うん。なんか、よく寝た。睡眠導入剤とか、飲ませた?」
「そんなもの飲ませるかよ。疲れてたんだよ」
「そっか……」
悠は目を開け、ノロノロと起き上がると、俺が持っていたメロンパンを受け取る。サンドイッチもあったのに、迷わずメロンパン。
「飲み物ある?」
「野菜ジュースとカフェオレなら」
「究極の選択じゃん……」
迷惑そうに言う。悠は甘い物が好きだ。
「カフェオレは甘いぞ」
「コーヒーがイや」
「何なら飲むんだ?」
一応、聞いてみた。
「ホットのレモネード。ちゃんと生のレモン絞ったやつ。はつみつ多めで」
寝ぼけてるのか? 学校でそんなもの、手に入るはずがない。
「自販機にはない」
「作って……」
「ウチに帰ったら作ってやる」
「うん」
嬉しそうに笑う。
「とりあえず、こっち飲んどけ」
野菜ジュースを渡すと、ストローを刺して飲む。
「あ、意外といける」
段々、目が覚めてきたようだ。
「そうか、よかったな」
「うん」
満面の笑み。
でも、メロンパンを食べて、「メロンパンとの相性は悪い」と、渋い顔で言って、野菜ジュースを俺に渡した。
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