1 家を出る前

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1 家を出る前

「カイト、行っちゃダメ!」  玄関で座って靴を履いていると、ドアの前に(ゆう)が立ちはだかる。  寝間着替わりにしている俺のシャツを着て、小さくて華奢(きゃしゃ)で、猫っ毛の悠が、目にいっぱい涙を浮かべ、俺を行かせまいと頑張っている。 「もうまずいから……」  立とうとすると、抱きしめられて上からキスしてきた。 「う……」  発情期のΩ(オメガ)は最強だ。  いくらしても足りないとばかりに、求めてくる。 ―― 学校なんて、行かなくてもいいんじゃないか?  悠の求めに応じていると、そんな考えが(よぎ)る。  このままいつまでもいつまでも、悠を抱きしめて、キスして思う存分したいという誘惑が、目の前にぶら下がっている。 「イヤだ。行かないで」  泣きながら悠は言い、俺を押し倒す。 「ダメだ……。俺が学校に行って、悠に勉強を教えるから、発情期が終ってもウチにいていいってことになったんだぞ」  上に乗って来る悠のサラサラの髪をなでる。 「イヤっ! カイト」  泣きながら行かないようにと、俺を押さえつけてくる。  しっとりとした肌が密着してきて、こっちまでその気にさせられる……。
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