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授業が案外まともだったことに驚いた。
「よお、ケイヤ、飯食べようぜ」
前方の椅子に腰かけた例のオレンジ髪がこちらを振り向く。
手には購買で買ってきたらしいパンとサンドイッチを抱えていた。
「……ああ」
どうやら俺とこの男は友達であるらしい。
「でさあ、川口の奴が~~~」
聞いたこともないクラスメイトの名前を次々に口にする。
こちらは適当に相槌を打つしかないが、それでコミュニケーションがなり立っていることが恐ろしい。
さすがは友人といったところだろうか。
「どうしたケイヤ、浮かない顔して」
「いや、別に……」
俺はそういって昂(そういう名前らしい)の視線を逸らす。
乳を揉み合っていた女子生徒達はいつのまにか違う話題に移っていた。
他にクラスに残っているのはさっきから顔を机につっぷしたままの奴や、足を組んで不動明王でもきどっているのかと思うくらい禍々しい雰囲気を放っている男。
後者は並み居る変人(俺にはそうとしか思えない)の中でもひときわ異彩を放っていて、その発達した筋肉や醜悪な表情から住む世界を間違っているのではないかと思う。
住む世界が違うのは俺も同一だが。
「ケイヤ?」
怪訝な視線を寄越す昴。
「なんでもないよ」
俺は笑ってそれをごまかした。
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