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ミルクにトースト。
「さあさあ」
背中を彼女に押されて理解が追い付かないままに椅子に座る。
「はい。あたしもう学校行くから。片づけはしといてよね?」
念を押す「妹」の迫力に、思わず頷く俺。
彼女はそれを見て満足気にこくりと首を動かした。
それから忙しそうに、二階と一階を往復する。
何やらもごもごと「あたっ」とか「はわ」とか叫ぶながら動き回る。
やがて大きなバックを背負い、彼女は廊下へと向かった。
玄関の閉まる音がしたところで、彼女が制服らしきものを身につけたいたことを思い出した。
制服というにはおよそ地味さからかけ離れた衣服を身に着けていたことを。
小鳥が窓の外で鳴いていた。
そこから望む景色は明らかに見覚えがない。
綺麗に刈り取られた雑草に、配置を工夫した石畳。
梢が圧するように傍らに鎮座している。
怒涛のように押し寄せるそれらの情報を、俺はただ受け入れるしかなかった。
まるで自分が見知らぬ世界に来たかのように感じる。
違和感。
まだ夢を見ているのだろうか?
咀嚼して飲み込んだパンの味はしかし、まぎれもない現実のものだった。
喉を通りゆくミルクの甘みを実感しながら、俺は腕を組む。
……これからどうすればいいんだろう?
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