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登校ルートは知っているはずがないのに自然と足が向いた。
電柱も、色が剥げた塀も、川沿いの道も。
どれもこれも見覚えがない。
それでいてこれが夢だとも思えなかった。
『ライトノベルの世界へようこそ!!』
あの文面の意味を考える。
ライトノベルの世界?
二次元の世界ということか?
だが行き交う人々は俺と同じ立体だ。
鼻も頬も、ちゃんと「奥」を持った立体。
ぺらぺらの平面ではない。
いや、俺がその平面の次元に落ち込んだら、そこは俺にとって三次元の世界になるのか?
自分でも実に馬鹿なことを考えていると思う。
自転車に載ったスーツ姿の男とすれ違った。
三歳くらいの女の子を連れた母親は、川辺に近づいて、何やら虫の観察をしている。
ジャージを着た中学生の集団が高い声をあげて俺の前を行く。
古ぼけた小児科医院を過ぎる。
ありふれた光景だった。
見たことはない。
でもありふれた光景。
それだけに、あの紙切れの文面の意味が分からない。
正体の知れない迷路に放り出されたようなものだった。
それでいて、俺の足は自然と行き先が分かっているようなのだ。
二手に分かれる道の先でも迷うことなく進んでいく。
そもそも俺はどこに「登校」しているのだろうか?
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