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ただ、目の前に広がるその光景が、ひどくライトノベルっぽかったと言えば十分だ。 ラノベっぽい。 その感覚が今の俺を支配していた。 校門を過ぎる。 わいわい言いながら自分の教室へ向かう生徒達。 俺も知っているはずがない教室へと向かう。 自然に動く足の感覚にもう慣れてきたところで、最初の「それ」は接触してきた。 「や!おはよ!!」 「うわっ!!」 腰の辺りを叩かれた俺は、思わず大声をあげてしまう。 途端に周囲の奇異な視線を浴びてしまった。 するとまた腰に打撃を感じた。 「こらっ!!なにしてるの!!」 「えっ……」 低いところから聞こえる声に反応が遅れる。 それでも振り向き、そして目線を下げた俺の目に飛び込んできたのは、まさしく「らしい」人物だった。 赤髪。 綺麗な瞳。 こんまりした体。 ひらひらしたスカート。 つんとした声がその奇妙な印象に拍車をかけた。 「ねえ、聞いてるの?」 「え、ええと…」 面積比率的に異様にデカい瞳ににらまれ、言葉が継げなくなる俺。 彼女はそんな俺を見て、やれやれと肩をすくめた。 「まったく、駄目ね、ケイヤは」 なぜ俺の名前を知っているのだろう。 そんな疑問が湧かない程度には、もうこの異様な世界に慣れつつある。 しかしこんなへんてこりんな少女にあっては話は別だった。 ここは高校だよな?     
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