5/11
前へ
/39ページ
次へ
その視線に気がついたのか彼女の方でも俺を見返す。 「……何?」 「いや……ええと、何がってわけじゃなくて……」 「何もないならこちらを見ないでほしいのだけれど」 「えっ?ああ……だよな。いや、ええと……」 しどろもどろになるのも無理はない。 胸がデカすぎる。 長い黒髪、瞳は青。 ツンと高い鼻に、鋭利な顎。 引き締めた唇は強い意志の現れ? 細い体に、その二つの胸だけが異様な強調として鎮座している。 スカートも信じられないくらい短かかった。 角度によっては視えそうだ。 こんな風紀委員長みたいな顔してるくせに!! 「だいたい、ケイヤ、あなたって人はね……」 「いや、ごめん、今忙しいから……」 そう言って慌てて彼女の傍らを通り過ぎる。 そのまま足が向くに身を任せた。 どうやら窓際が俺の席らしかった、 逃げるように机の間を縫って、ひとまず椅子に落ち着く。 「はあ……」 疲れた。 どっと疲れた。 ただ登校しただけなのに。 在籍しているはずのない高校に。 机に体ごとつっぷしていると、しかし外界からの刺激は止んでくれなかった。 「おいおいケイヤ、大丈夫か?」 軽い声。 このまま無視してやろうかとも思ったが、見知らぬ世界だけに放っておいたら後で何があるか分からない。 「ケイヤ?」 俺は諦めて顔を挙げた。     
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加