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「じゃあね。今月の土産、楽しみに待ってるんだよ」
ニヤリと笑うと祖母はそそくさと病室を後にした。
「――お土産ねぇ」
それは真弓から贈られる見舞いの品のことだ。アザミは彼女と一度も会ったことはない。だが、真弓は律儀に、毎度見舞いの品を祖母に言付ける。
祖母が言うには、彼女は良く言えば慈悲深い人。悪く言えば幸災楽禍な人らしい。
要するに、『他人の不幸は蜜の味』自分よりも不幸な人が好きみたいだ。そして、その中でアザミは最上級に可哀想な子――ということだ。
類は友を呼ぶというが、祖母を筆頭にその知人もろくでもない人ということだ。そして、そんな彼女から贈られる品もまた、ロクでもない物ばかりだった。
楽しみねぇ……。
祖母の消えたドアを見つめながらアザミが鼻で笑っていると、その向こうからバタバタと忙しい足音が聞こえてきた。
アザミはサッと視線をミイに移した。
硬く強張った顔。ビクッと震える肩。やはり祖母の思い過ごしではないようだとアザミも確信する――この子は母親を怖がっている……と。
祖母の言葉を信じるようになったのは、熱に浮かされ朦朧としていた時、カーテンの隙間から見えたミイが酷く怯えているように見えたからだ。
しかし、何を怖がっているのだろう? アザミの脳裏に祖母の言葉が蘇る。代理ミュンヒハウゼン症候群――それだったら?
アザミは頭を振った。もしそうだとしても、それを立証する術は……ない。
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