35人が本棚に入れています
本棚に追加
入退院を繰り返すのは植皮術を行うため。子どもの頃のこんな大火傷は、成長に合わせて皮膚移植をしないと、引き攣れてとんでもないことになるらしい。
だが、不思議なことに、何度手術をしても赤黒い薔薇が形を変えることはなかった。まるでそれが私の象徴だとでも言っているように……。
「本当、この子は不憫な子ですよ……可哀想過ぎます」
祖母は悲しげに瞼を伏せるが、可哀想だと思うのなら、どうしてこの姿を人前に晒すのだと言いたい。
――祖母が本当はそう思っていないからだ。心の中では万歳三唱しているに違いない。何故なら、加害者の親がスキャンダルは命取りとされる政界人だからだ。
彼らには面子がある。それも多大な! だから『心からのお詫びです』と言いながら派手な誠意を見せる。
入院のたびに届けられる豪華な花束や高価なお菓子は勿論のこと、手術にかかる費用や見舞金まで――秘書の手で届けられる。
だが、彼らが病院に足を運んだのは事故のあった日、入院した時のみ。マスコミに嗅ぎ付けられたからだ。それ以降一度も来たことがない。
普段はこういう不義理に煩い祖母だが、彼らのことは一度も悪く言ったことがない。それは十分な補償を貰っているからだと思う。しかし、その金額が幾らか私は知らない。
断言してもいい。祖母の老い先は全然短くない。化け物のように、人の生き血を吸って何百年も生き続けるに違いない。
最初のコメントを投稿しよう!