プロローグ

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そんな祖母の話を愁傷な面持ちで聞いている母親たちも母親たちだ。 お腹の中では祖母を『変な人』と見ているか、私と比べて『うちの子がこんなじゃなくてよかった』と安堵していることだろう。 何故なら、大人は表と裏の顔を上手に使い分け、悪びれた様子も見せず、誤魔化し嘘ばかり吐く生き物だからだ。 だが、それは大人に限ったことではない。子供だって表の顔も裏の顔も持つ。お馬鹿な大人たちはそうは思っていないが……。 この前テレビで教育評論家なる人が、『子供は無垢で美しい生き物だ』と言っていた。子供の真の顔を知らずして堂々とだ。どうしてそんなことが言えるのだろう? 特に母親は我が子を盲信的にそう思う傾向にある。 そんな母親たちの多くは、子供を意のままに操れると思っている。 自分の分身とでも思っているのだろうか? 大人だって子供だって、平等に一個の魂を持つ個人なのに……ゲームの中のキャラを操縦するが如く、子供の人権を脅かし、自分が何者かを悟らせないようにコントロールして、親である自分から離れていかないように支配する。 傲慢としか言えない行為だが、それがお互いの幸せだと思っているから救いようがない。 分かっていないのだ。最後にしっぺ返しされるのは親たちだということを……不幸の始まりを作っているのは自分たちだということを……。 ――本当に大人は馬鹿ばかりだ。
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