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1 アルファとオメガ
かつて、人間には発情期がなかった。
他の種族には発情期があり、エサのことや天敵のことが関係して、子育てがしやすい時期に子が生めるようにそういうものが存在していると言われている。
人間には、発情期がなかった。
ただそれは、一年中発情期とも言える。
いつ子供を作っても大丈夫な種。
それが、人間だった。
牙や爪などの武器もなく、足が速いわけでもない人間が、知恵を使って食物連鎖の頂点に君臨し、地球の至る所に人間の姿を見るようになった。
一度の出産で1人で、2人以上生まれることは稀。
妊娠の期間も長いし、成人するまでの時間も他の哺乳類と比べても長い。
それなのに、ここまで数を増やしたのは、交尾で快楽を覚えるからかもしれない。
一年中発情期で、やりたい時にいつでもできる。
けれど、人間は種を残すというよりも、快楽を求めて交尾をするようになった。
そして、知能を持つ人間は、それに嫌悪するようにもなった。
理性を失ってしまうその行為は、屈辱的な気分を味わわせた。
『はしたない』などという言葉を使い、次代を担う子供たちに『幼いうちは性行為を行わないように』という学習をさせた。
体ができていないうちの妊娠・出産は親子で生命の危機に瀕する。
それが功を奏したのか、それを毛嫌いする人間も増え、異性に興味を持たない者も増えた。増えすぎた人間は、それ以上、数を増やしてはいけないと、遺伝子レベルで判断したのかもしれない。
そして、妊娠・出産につながらない交尾も流行した。
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