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「カイト……」
俺の名を呼び、裸で床に座り込み、潤んだ瞳で見上げてくる、昨日までの好敵手を見下ろす。
「どうしよう……、ボク、どうしてこんな……?」
上気した頬、乱れた息。
「さぁ……」
聞きたいのはこっちだ。
教室に忘れ物を取りに来たら、俺の席に悠がいた。
「とりあえず、服、着ろ」
そう言って、脱ぎ捨てられていたシャツを拾って渡す。
「ん……」
悠は恥ずかしそうにシャツを受け取り、細くて白い身体に軽く羽織る。
「……ボタンしろよ」
「熱い……」
「そうか……」
「うん……」
「お前、αじゃなかったのか?」
「αだよ!」
悠はムキになって叫んだ。
「でも、それ、どうみても……」
Ωの発情期じゃないか? と言うのをやめた。
言わなくても本人はわかっている。
この年齢になれば、Ωは発情期が来るようになるから、検査をしなくてもそれで判別ができる。
Ωには、三か月に一度、一週間程度の発情期がある。
恐らく、悠は、その発情期が来ている。
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