1 アルファとオメガ

5/11
前へ
/74ページ
次へ
「どうしよう、カイト……」  悠が抱きついてきた。 「ちょっ……」  泣きじゃくる悠を無下に引き離すのもためらわれた。 「カイト……」  必要以上にスキンシップをしてくるクラスメートに、小さくため息をつく。  昔から男にしては背は低いし華奢(きゃしゃ)な感じで、カッコいいというよりは、可愛い系だと思ってた。スポーツ万能で成績も上位だったから、まさかΩだとは思わなかった。 「ここだと、誰が来るかわからないから……」  悠の髪をそっと撫でる。  色素が薄い感じの、サラサラな猫っ毛。  悠って、こんなに魅力的だったのか?  それとも、Ωの出すフェロモンにやられているのだろうか? 「ん……」  悠が体をピクンとさせる。  昨日までの悠と、全然違っていた。  昨日までというか、さっきまでは普通だったのに……。 「ウチ、来るか?」  悠がピタっと泣き止み、俺を見上げる。 「カイトの家?」  その言葉をつむぐ唇が濡れていて、思わずみとれてしまう。 「ヘンなこと、しないから」  そう言っても、気を抜けば何をしてしまうか自分でもわからない。  悠は不満そうな顔でもじもじしている。  頭がクラっとするのを堪える。     
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

233人が本棚に入れています
本棚に追加