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「紫藤さん、ですか。私は宮原美加っていいます。この前はプリンありがとうございました」
私がお礼を言うと、紫藤さんは困ったような顔をした。
「お礼なんて.....きちんと代金を払ったとはいえ、あれだけ大量に買い込めば困る人もいると考えなかった私が悪いんです」
よく見れば袋の中のプリンは山積みなことに変わりはないけれど、この前よりも少なめだ。
見た目はちょっと怖そうだけれど、意外に優しい人なのかもしれない。
「そういえばこのイラスト、紫藤さんのなんですか?」
改めて手に持っていたイラストを眺める。
「はい。私は少女漫画家なんです」
「え!? じゃあこれ、漫画の原稿ですか!?」
上手だとは思っていたけれど、まさかプロだったとは......
「はい。実は締め切りが近くて、この原稿がなくなったら間に合わない所でした」
ほっとしたように言う彼の目の下には隈ができていた。
漫画家って大変なんだな......
「見つけて下さりありがとうございます」
紫藤さんは袋から取り出したプリンを一つ私に差し出した。
「そんな、紫藤さんが自分で見つけたようなものじゃないですか」
まだ店員さんに渡してもいなかったのに、お礼なんて貰えない。
「いえ、コピー機の中から見つけたのは貴女ですから」
「ええぇ」
結局、紫藤さんに強引に押しきられプリンを受け取ってしまった。
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