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前編
午前十時のいつものコンビニ。
大学の空き時間にここでおやつを買うのが私、宮原美加の日課だ。
「あれ? プリンがない」
いつも買っている『贅沢ミルクプリン』が見当たらない。
それどころか、いつもは数種類ほど並べてある筈のプリンたちがごっそりなくなっていた。
「どうぞ」
突然声をかけられて振り向くと銀縁のメガネをかけた二十代くらいの男の人が立っていた。
切れ長の眼はどこか冷たくてちょっと怖かったけれど、私の方に差し出された手の中にプリンがあったことで怖さは薄れた。
反対の手に持ったカゴの中にも山積みのプリン。
なるほど、プリンがなかったのは彼が原因か。
「プリン好きなんですか?」
差し出されたプリンを有り難く受け取りながら尋ねると、彼はにっこり笑った。
「いいえ、大っ嫌いです」
メガネの奥の瞳はちっとも笑っていなかったけれど。
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