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「出て行け?お前薄情だな。3時間かけて実家に帰ってきた兄に向かって出て行けって」
「違うんだって。今から人が来るの!」
「人?」
「ほら、お兄ちゃんも知ってるでしょ?奏くん」
その名前を聞いた途端、
心臓がドクンと震える。
小野寺奏。
妹である芽衣の恋人で、
俺の・・・
好きな、人。
「も、もしかしてお前・・・」
嫌な予感がして、芽衣を見上げる。
真剣な顔をしていた。
「これから、奏くんが泊りにくるの」
やっぱり、な。
芽衣は親が留守の間に、奏を連れ込むようだ。
そして泊らせるということは・・・
「あたし、奏くんとついに・・・・・・結ばれるんだから」
奏と、結ばれる。
芽衣は動物を狩るハンターのように鋭い目をしていた。
奏に抱かれる覚悟はできているらしい。
「・・・本気か?」
「うん。来る前にちゃんとお風呂に入るし、下着も新しいの買った」
「っていうことは、ようやく好きになったんだな。そ・・・小野寺くんのことを」
「好きっていうか、付き合ってもう10ヶ月くらい経つのに、キスしかしたことがないなんて恥ずかしいじゃない」
「・・・・・・」
思わずため息がでた。
『お前、あいつのこと・・・好きなのか?』
『んー、そこはおいおいって感じかなぁ』
初夏のころ、芽衣は奏のことを好きなわけではないと言っていた。
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