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「こんばんは、芽衣さん。少し早すぎましたか?」
「だいじょーぶ!ささ、あがってあがって」
「お邪魔します」
奏は芽衣に手を引かれ、家の中へと進んでいく。
気のせいか、奏は俺と話すときより
優しく頼もしい話し方になっている気がする。
奏も奏で、俺と芽衣とでは態度が違うようだ。
「・・・なんだかなぁ」
一人で玄関に立っているのもむなしいので、
俺もリビングへ戻ることにした。
それから芽衣と奏はテレビを見たり談笑をしていた。
俺はただ二人を見ている。
いつも以上に好青年な奏。
いつもより女の子らしい芽衣。
お似合いのカップルだった。
きっと誰もが二人の邪魔をしちゃいけないって思うだろう。
だけど俺は、二人の邪魔をしたくて仕方がない。
だって俺は情けないことに、
自分の妹に嫉妬しているから。
俺が席を外して、芽衣が奏に触れたら。
そう思うだけで、胸が重く暗くなる。
今、二人を見ている段階ですでに、重くなっているのに。
「あ、もう11時だ。奏くん、あたしお風呂に入ってくるね」
「はい」
「その後に奏くんも―」
「いいから早く入って来い。俺も入りたいんだ」
「もー、お兄ちゃんは最後だからね!」
芽衣は会話に入られたのが気に入らなかったらしく、
ぷんぷん怒りながら浴室へ向かった。
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