冗談じゃない

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 男と俺は頬を緩めた。  男は先に立ち上がって、俺に手を差しのべた。俺はその手に掴まり立ち上がろうとするが、力みすぎていたせいか力が入らない。男はそんな俺を見かねて力を込めて俺を引き起こした。 「ああ、ええっと……どうも……」 「You're welcome 」  やはり英語だ。レクシスが導入されてから、学校教育に外国語の三文字は消えた。つまり俺は英語が分からない。簡単な言葉は少し分かるが、ほとんどはレクシスの翻訳機能を使っていた。先ほどからオートモードに戻そうとしているのだか、レスポンスが無い。さっきの電流でイカれたか? 俺はとりあえずわかる範囲で答えた。 「日本語でおーけー……?」 自分でもわかる。なんだその英語は?! 「日本人か」  分かるんかい!? 「日本語分かるじゃないですか!?」 「なに。ちょっとその緩みきったアホ面を笑ってやろうと思ってな」  こいつ……。解せぬ。 「というか、あなた誰なんだよ? なんで警察の警備ドローンの追われてたんだ?」  e-ショックガンは登録された遺伝情報で警察官本人を登録し認証するものだから、本人以外は使えない。と言うことは、彼が警察官であることが推測できる。だが、追ってきていたのは警察の警備ドローン。意味が分からない。 「俺は警察官だった者だ」 流暢な日本語はそのためか。 「名乗ってなかったな。俺はケインズ・ホプキンス。あんたは?」 「緒方ライム、大学生だ」  ケインズと名乗った男は、俺に握手を求めてきた。俺は流れで握手する。 「大学生にしちゃあ上物のステレオを持ってたな。あれは2082年製の良い代物だ。潰れちまうには惜しいもんだった。だが、あのアパートにはもう戻れないから、別に大した事はないか」  は? 「どういうことだよ」 「言葉のまんまだ。お前、これから追われる身になる」  は? は? 「いやいや、意味分かんないんだけど。俺が追われる身って──」 「ドローンはお前を標的認識した。お前、アパートに居たとき途中から襲われかけただろ。つまりはそう言うことだ」
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