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おいおいおい。冗談じゃない。
「ドローンがイカれてたとかじゃ……」
「だったら自己制御プログラムが作動して勝手に止まる。でなくともセンターが止める。警察のは誤作動するほど甘くない」
自立機動を可能にする完全な管理システムは、言わずとも知れた完璧さだ。過去には1度たりとも誤作動を起こした試しはない。センターとの相互管理だから、尚更だ。
「冗談じゃない! なんで俺が追われなきゃならないんだ! 追われてたのはむしろあんただろ!?」
「だが事実だ」
その言葉が重くのし掛かる。
「お前は運悪く俺とドローンとの戦闘を間近で見ちまった。それが運の尽きだったんだ。ドローンは俺を含めてお前も消そうとしただろ?」
「そりゃあんたが俺んちに突っ込んできたから悪い訳で……! 第一、あんた、警官なんだろ? なんで──」
「俺も好きで追われてるんじゃない。しかし忠告はしておく。お前があのアパートに戻ろうが、俺の事を警察に通報しようが構わん。だが、一度ドローンが標的認識したら、センターでこの世にある全ての感知センサー類がお前を目標に追尾をかけて警察が逮捕しに来る。俺みたいな人間の警察ならe-ショックガンで撃たれて気絶程度で済むかも知れんが、警備ドローンなら犯罪認定度によっては抹消されるだろうな。さっきみたいに」
「そんな……」
家での事が頭を過(よぎ)る。あのドローンは俺にも攻撃してきたのだ。
ケインズは俺に迫ってきた。
「あんたに残された選択肢は2つ。地獄の火の海に堕とされるか、エデンの園を出て地の果てまで火の玉から逃げ続けるかだ。俺と一緒に」
冗談では済まされない話だ。何故俺がそんな犯罪者扱いを受けなければならない。普通に大学へ通って、女の子と付き合って、アルバイトをして。前科だって無いのに。
「……!」
言いたい言葉は出なかった。まだ状況が信じられない。
「好きにしろ。幸いここは旧市街だ。監視カメラも少ない。運が良ければこの地区で死ぬまで逃げ続けられる。まあ時間の問題だがな」
この旧市街は小さな町ひとつ分の広さしかない。ドローンを使って囲い込みでもされたら、終わりだ。
「……どうしろってんだよ」
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