四 月曜日

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「あらそう? なんだか楽しそうに見えたから。彼女でもできた?」  いつもの話題にあはは、と乾いた笑いで答えたけれど、脳裏に都築さんの顔が浮かぶ。  彼女ではないけれど、友達は、できたかもしれない。そう思ったら勝手に顔が緩んだようで、隣に座る上司まで春かあなどと言いだした。 「そういうんじゃないですってば。もう初夏ですよ」  一応の弁明を口に乗せて、表情筋を意識していつも通りを装う。手は仕事を再開しながら、頭の中は今日の弁当の中身と新しい友人のことでいっぱいだった。  空の弁当箱の回収は特に書類のやりとりもないため、ほとんど顔を合わせない。暑くなって来たし、冷たい飲み物でも差し入れしてみようか。そうだ、僕からも何か聞いてみよう。おかず、味噌汁、と話したから、次はなんだろう。  また明日、なんて言ったのは随分久しぶりだ。少しだけわくわくしているのは、きっと気のせいではない。
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